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BOOMRANNG「過去と今を繋げて未来へ」

BOOMRANNG「過去と今を繋げて未来へ」

An Interview with BOOMRANNG Studio:

ムンバイ出身のクリエイティブユニット「BOOMRANNGスタジオ」。Sonal Vasave(ソナル・ヴァサヴェ)とMakrand Narkar(マカランド・ナルカール)の二人によるこのスタジオは、ストーリーテリングとイラストへの深い愛情を軸に、色彩豊かな作品を特徴としています。

名前の「BOOMRANNG」は、英語の「BOOM(爆発)」とヒンディー語の「RANG(色)」を組み合わせたもので、その名が示すように、アイデアが爆発するような表現が大きな魅力です。本インタビューでは、アーティストとしての二人の歩みや哲学、そして共に作り上げた「COSMICPUNK」の世界観について語ります。

Q: どのようにして出会い、活動を始めたのですか?

Makrand: 私たちはムンバイのJ.J Institute of Applied Artでイラストレーションを専攻し、そこで出会いました。お互いにストーリーやアニメが好きで、何時間も語り合ううちに自然なかたちでコラボレーションが始まりました。さらに、両親の応援もあり、好きなことをキャリアへと繋げることができました。

Sonal: 子供の頃、私は床でも壁でも、描ける場所があればどこにでも絵を描いていました。母はそんな私に、絵本やコミックを通じてストーリーテリングの世界を教えてくれました。そのおかげで、物語を作る情熱が芽生え、プロのアーティストになる道が開けたのです。それもすべて、母の励ましのおかげだと思います。

ストーリーテリングは物語を通じて感情や情報を伝える技術です。日本では「語り部」や「落語」、アニメや漫画など多様な形で発展し、文化や教訓を伝える手段として生活に根付いています。

Q: お二人とも、支えられる環境があったことは素晴らしいですね。インドにおけるアーティストの社会的な立ち位置について教えていただけますか?

Makrand: インドでは、職業を尋ねられて「アーティスト」と答えると、驚かれることが今でも少なくありません。エンジニアや銀行員が一般的な中、アーティストの活動はまだ十分に理解されていないのが現状です。

なので最初の頃は手探りしながら進む道を模索してきました。ジェンダー平等や多様性などの社会問題も積極的に取り上げられ、アーティストの役割が広く認識されつつあります。しかし、時代は変わり、ソーシャルメディアの普及でこの5年間でクリエイティブ分野は大きく成長しました。

Q: インドのアーティストたちはどのような社会問題に取り組んでいますか?特に重要だと感じるものはありますか?

Sonal: アートスクール在学中、LGBTQコミュニティ、特にトランスジェンダー女性に焦点を当てたプロジェクトを通じ、作品を通じてジェンダー平等を訴える必要性を実感しました。

特にムンバイのように、多様な背景を持つ人々が共存する文化の中では、『多様性』がさらに重要だと考えています。そのため、それについて考え、より深い理解を促すことが、これからの活動において不可欠だと感じています。

Q: お二人の作品はインド神話に深く根ざしているそうですね。どのように影響を受けているのか、詳しく教えてください。

Sonal: インド神話は、私たちにとって豊かなインスピレーションの源です。特にお気に入りは『pañcatantra(パンチャタントラ)』で、動物を題材とした寓話に深い教訓が込められています。また、『Ramayana(ラーマーヤナ)』や『Mahābhāratam(マハーバーラタ)』といった壮大な叙事詩からも大きな影響を受けています。

これらの物語は多様性に富み、SF的な要素と古代の知恵が融合しており、私たちの作品に欠かせないインスピレーションとなっています。

Q: 影響を受けた日本のアーティストについて教えてください。

Makrand: スタジオジブリの宮崎駿さんからは、大きな影響を受けています。彼の物語は色鮮やかで生命力に満ちており、夢のような世界を描きながらも、深く普遍的なメッセージを持っています。そのメッセージは、子供だけでなく大人にも深く響くものです。

私たちも、自身の作品を通じて、彼のように幅広い世代の心に届く表現を目指しています。

Q: 「COSMICPUNK」という世界を創造した背景にはどのようなインスピレーションがありましたか?また、この世界観をどのように作り上げていったのか、そのアプローチについて教えてください。

Makrand: 私たちの考え方の中心には「レトロ・フューチャリズム」があります。これは、過去の信念と未来へのビジョンを組み合わせる発想で、インドの伝統的な文化と未来像を掛け合わせて、新しい世界を作り上げることを目指しています。

Sonal: 「COSMICPUNK」の核にあるのは「探求」です。未知のものを追い求め、新しい可能性を見つけ出すことが、私たちの創作活動の根本にあります。この探求心を大切にしながら、新しいアイデアに常に心を開き、過去と未来を融合させたレトロ・フューチャリスティックな発想を形にしています。私たちが目指しているのは、作品を通じて新しい視点を届け、多様性や変化を受け入れる世界観を提案することです。

Q: プロジェクトにおいて、どのように協業しているのか、また、具体的な役割分担があれば教えてください。

Sonal: コンセプトやストーリーは一緒に行い、その後ラフスケッチを進めます。私は主にキャラクターデザインに集中し、衣装や人物を描くことを担当しています。一方で、マクランドは全体の構図やサイドエレメント、カラーのレンダリングを手掛けています。

ただし、新鮮で実験的なアプローチを維持するため、時には役割を入れ替えることもあります。このような共同作業を通じて、ユニークで予想外の結果が生まれることが多いです。

Q: 一番伝えたいメッセージは何ですか?

Makrand: 私たちが伝えたい一番大きなメッセージは、「探求」と「多様性を受け入れること」です。ジェンダーや宗教、カースト、さらには銀河や惑星といった違いも排除せず、すべてが自由で平等な世界を目指しています。

Sonal: COSMICPUNKの世界では、「多様性」がとても重要なテーマです。それは、探求と開放の可能性が無限であり、その可能性を妨げるものがあってはならないからです。すべては「好奇心」から始まります。そしてその探求は、外の世界だけでなく、自分の内面や信念にも向けられるべきです。

時には、自分自身が最大の壁になることもあります。どこまで達成できるかを追い求めることは、自分を律し、情熱に向かって努力することとつながっています。まず情熱を持つことが大切で、その次に多様性を尊重する姿勢が必要です。そして、自分がやりたいことを追求しながら、好奇心を持って自分自身で人生の意味を見つけることが求められます。

誰かに「こう生きなさい」と教えられるのではなく、自分で考え、自分なりの意味を探し出すことが大切です。他人のルールに従うのではなく、自分自身の探求を通じて自由に生きる。それが、COSMIC PUNKが伝えたいメッセージのひとつです。

Q: 今後について教えてください?

COSMICPUNKの世界は、私たちにとってまだ始まったばかりです。これからさらに広げて、多くの可能性を探しながら、同じ価値観を共有できる人々とコミュニティを作っていきたいと考えています。その未来では、自由な発想や創造的な生き方を楽しみながら、お互いの選択を尊重し、共に成長できる場を目指しています。それはまさに『生きるアート』と呼べるものです。ただ日々を過ごすだけでなく、他の人にチャンスを与えながら、自分の目的を見つけていくことが大切だと思っています。COSMICPUNKの「ダークサン」という象徴は、未知のものを探求する旅の始まりを示しており、私たちが人々に、自分の道を勇気を持って進むことの大切さを伝えたいという願いが込められています。
また、アートは人生に新たな価値を加え、言葉では表せない感情や物語を伝えるための強い力を持った手段だと考えています。未知の世界を探求し、新しいつながりを生み出すこと。それが私たちの目指しているものです。



今回のインタビューでは、BOOMRANNGが描く、過去と未来をつなぐビジョンをご紹介しました。多様な価値観や情報に簡単に触れられるこの時代だからこそ、自分にとって本当に大切なものを見失わないことが重要です。そして、「今」を希望に満ちた未来へとつなげるためには、過去の知恵を受け継ぎながら、自分自身、そして私たち自身を理解することが求められます。BOOMRANNGの作品はその大切さを教えてくれます。

interviewer: Eri Tomita (Geek/Art)

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