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  • BOOMRANNG「過去と今を繋げて未来へ」

    BOOMRANNG「過去と今を繋げて未来へ」

    2025.01.10

    An Interview with BOOMRANNG Studio: ムンバイ出身のクリエイティブユニット「BOOMRANNGスタジオ」。Sonal Vasave(ソナル・ヴァサヴェ)とMakrand Narkar(マカランド・ナルカール)の二人によるこのスタジオは、ストーリーテリングとイラストへの深い愛情を軸に、色彩豊かな作品を特徴としています。 名前の「BOOMRANNG」は、英語の「BOOM(爆発)」とヒンディー語の「RANG(色)」を組み合わせたもので、その名が示すように、アイデアが爆発するような表現が大きな魅力です。本インタビューでは、アーティストとしての二人の歩みや哲学、そして共に作り上げた「COSMICPUNK」の世界観について語ります。 Q: どのようにして出会い、活動を始めたのですか? Makrand: 私たちはムンバイのJ.J Institute of Applied Artでイラストレーションを専攻し、そこで出会いました。お互いにストーリーやアニメが好きで、何時間も語り合ううちに自然なかたちでコラボレーションが始まりました。さらに、両親の応援もあり、好きなことをキャリアへと繋げることができました。 Sonal: 子供の頃、私は床でも壁でも、描ける場所があればどこにでも絵を描いていました。母はそんな私に、絵本やコミックを通じてストーリーテリングの世界を教えてくれました。そのおかげで、物語を作る情熱が芽生え、プロのアーティストになる道が開けたのです。それもすべて、母の励ましのおかげだと思います。 ストーリーテリングは物語を通じて感情や情報を伝える技術です。日本では「語り部」や「落語」、アニメや漫画など多様な形で発展し、文化や教訓を伝える手段として生活に根付いています。 Q: お二人とも、支えられる環境があったことは素晴らしいですね。インドにおけるアーティストの社会的な立ち位置について教えていただけますか? Makrand: インドでは、職業を尋ねられて「アーティスト」と答えると、驚かれることが今でも少なくありません。エンジニアや銀行員が一般的な中、アーティストの活動はまだ十分に理解されていないのが現状です。 なので最初の頃は手探りしながら進む道を模索してきました。ジェンダー平等や多様性などの社会問題も積極的に取り上げられ、アーティストの役割が広く認識されつつあります。しかし、時代は変わり、ソーシャルメディアの普及でこの5年間でクリエイティブ分野は大きく成長しました。 Q: インドのアーティストたちはどのような社会問題に取り組んでいますか?特に重要だと感じるものはありますか? Sonal: アートスクール在学中、LGBTQコミュニティ、特にトランスジェンダー女性に焦点を当てたプロジェクトを通じ、作品を通じてジェンダー平等を訴える必要性を実感しました。 特にムンバイのように、多様な背景を持つ人々が共存する文化の中では、『多様性』がさらに重要だと考えています。そのため、それについて考え、より深い理解を促すことが、これからの活動において不可欠だと感じています。 Q: お二人の作品はインド神話に深く根ざしているそうですね。どのように影響を受けているのか、詳しく教えてください。 Sonal: インド神話は、私たちにとって豊かなインスピレーションの源です。特にお気に入りは『pañcatantra(パンチャタントラ)』で、動物を題材とした寓話に深い教訓が込められています。また、『Ramayana(ラーマーヤナ)』や『Mahābhāratam(マハーバーラタ)』といった壮大な叙事詩からも大きな影響を受けています。 これらの物語は多様性に富み、SF的な要素と古代の知恵が融合しており、私たちの作品に欠かせないインスピレーションとなっています。 Q: 影響を受けた日本のアーティストについて教えてください。 Makrand: スタジオジブリの宮崎駿さんからは、大きな影響を受けています。彼の物語は色鮮やかで生命力に満ちており、夢のような世界を描きながらも、深く普遍的なメッセージを持っています。そのメッセージは、子供だけでなく大人にも深く響くものです。 私たちも、自身の作品を通じて、彼のように幅広い世代の心に届く表現を目指しています。...

  • witness 「日常生活にある美を愛する芸術家 」

    witness 「日常生活にある美を愛する芸術家 」

    2024.08.15

    日常の美しさを見つめる 私たちは“ここではないどこか”に喜びや美しさを求めがちだ。 しかし、実は足元に目を向ければ、そこには美しく愛しい風景が広がっている。 例えば、家族や友人との時間、日々の中で感じる小さな喜び、四季折々の風景。 これらはすべて「今、ここ」にしか存在しない特別なもの。 witnessの作品は、そんな日常にある見落としがちな美しさを思い出させてくれる。 ルーツ 1: 感性の原点 「子供のころは父親からの影響でアニメ、マンガ、特撮、ゲーム、プラモデルといったものにずっとハマっていて、 チラシの裏に落書きしたりノートにマンガを連載して自分一人で楽しんでいました。 内容はほぼドラゴンボールなんですが(笑)。ガンダムやウルトラマン、仮面ライダーは今でも大好きです。 ゲームソフトのパッケージにはポップなイラストが多かったのですが、 天野喜孝さんが描かれたファイナルファンタジーシリーズには、 これまで見てきたものとは違う繊細なタッチや色の使われ方に衝撃を受けました」 ルーツ 2: 福岡の多様な文化とアジアとの交流 witnessが生まれ育った福岡市は、九州地方の経済と文化の中心地であり、 豊かな歴史と現代的な魅力が融合する都市です。 古代から重要な交易拠点として栄え、現在ではITやスタートアップの拠点としても注目されています。 「福岡は九州各地から人が集まることもあって、アーティストがとても多い地域です。 ギャラリーもここ数年で増え、注目が集まっています。 また、福岡はアジアとの玄関口とも呼ばれていて、韓国の釜山とは飛行機で50分の距離なので、 よく遊びに行きます。 現地の友達とお互い行き来し、美味しいものを紹介しあったり、文化の違いを知ることがとても楽しいです」 花のモチーフについて 「活動初期は線や模様などの抽象画を描いていたのですが、 モチーフを取り入れる練習として花を描き始めました。 草花がフレッシュなエネルギーを伴いながら成長し、 時の流れとともに枯れていく中で、色やかたちが変わっていく美しさ。 それは人間の年齢や老いていく姿にも重なって見えます」 絵を描くうえで大事にしていること 「偶然性も大事にしています。 例えば、刷毛のストロークやマスキングテープの位置などです。 10代の頃、ロックやパンクロックが好きでよく聴いていたので、 上手く表現できなくても最初に感じたことはとても大切にしています。 なので描き損じや一筆目のラインを好んで残すことが多いです」

  • TAKERU IWAZAKI「FLOW ー 自由と個性ー」

    TAKERU IWAZAKI「FLOW ー 自由と個性ー」

    2024.05.23

    TAKERU IWAZAKI 絵の中に自分が入っている、他の存在を感じない静かな世界にいる TAKERU IWAZAKIは、絵を描いている時の自分の状況をこう説明する。絵を描いている時に完全に没頭し、自己意識が低減し、時間の感覚を失い、作品と一体化する。これは心理学でいう「フロー状態」であり、禅でいう「無我」の状態にも似ており、内面の静寂や平和を感じられる瞬間だ。 「FLOW」これはIWAZAKIのメインのテーマである。これには二つの意味があり、一つは水や雲の変幻自在な形や表情の「流れ」、そしてもう一つがこのフロー状態だ。彼はそれが楽しく、その状態になるために絵を描いていると言っても過言ではない。 ORGM_5 2023 ルーツ1: 静岡 IWAZAKIの故郷である静岡市は、人口約70万人を抱える都市だ。この地は、日本の象徴である富士山の麓に広がり、山々に囲まれた自然豊かなエリアとして知られている。南部は駿河湾に面し、新鮮な海鮮料理で有名だ。 また、歴史的には、戦国時代を終え、江戸時代の幕開けとなる徳川家康の幼少期の地としても知られ、日本茶の名産地としてもその名を馳せている。 IWAZAKIは20代前半にデザインの専門学校に通うために東京に拠点を移したが、3〜4年で生まれ育った静岡市に戻ることを決めた。東京の多くの誘惑によって制作に集中できなかったのが理由だった。 結果的に生まれ育った街だからこそ、互いに応援し合える人間関係があり、彼が制作で使用しているオリジナルの変形木製パネルも、このような地元の仲間のサポートがあってこそ生まれたものだ。 ルーツ2: アブストラクト・ヒップホップ 「実験を重ねて独自のサウンドを追求する姿勢や、ラップ(言語)に縛られず、聴く人が自由に風景などをイメージできるスタイルに影響を受けました」 彼が最も影響を受けたアブストラクト・ヒップホップは、1990年代初頭に登場した伝統的なヒップホップを超えて、ジャズやエレクトロニカなどの影響を受け、非伝統的なビート構造を用いることで知られている。 また特定の文化や社会的文脈から自由なため、幅広いリスナーに受け入れられた。彼の作品の印象に共存する和洋の要素は、欧米のストリートカルチャーや音楽に影響を受けたからだろう。 EXTRACT_3 2023 FREEFORM 自由であること 日本は自然の美しさと厳しさが共存する国であり、しばしば自然災害に見舞われる。この環境が私たちに自然の力への深い畏敬の念を植え付け、自然と共生する文化とアイデンティティの形成に寄与している。TAKERU IWAZAKIにとっても「自然」は重要なインスピレーションの源だ。 「水や雲の変幻自在なところや、形や表情に惹かれます。そして、同じ種類の植物でも、貝殻などでも、個体によって変形していたり、何一つ完全に同じ形がないという、個性にも惹かれますね」 IWAZAKIのEXTRACTシリーズでは、同じ総柄のドローイングのシルクスクリーンの版を使用しながらも、形が異なるパネルにプリントすることで、各々が独自の存在となる。一方で、同じ版で作られていることから、一つの連なりとしてのアイデンティティを形成している。